お店をつくる人々 Peops

“発酵で世界を幸せにする” ーー
和歌山からパリへ、たくあんが海を渡る。
正直に、まっすぐに「おいしい!」をつくり続ける昔ながらの漬物屋。

樽の味 代表取締役社長 / 細田 幸平さん

公開日:2026年5月28日

人もまた、ゆっくり発酵する ― 理念が醸す「樽の味」の旨味

商品が整った。次に磨きたいのは――わたしたち自身。
「人の成長も発酵と同じ。ゆっくり、丁寧に、時間をかけて育てていこう」
そう確かめ合いながら、経営理念と6つのクレドを仕込みました。
GCCで学んだ“人本経営”、ヘッズのクレド、『日本で大切にしたい会社』の事例……。
それらを自社の樽で静かに寝かせ、私たちの言葉へと醸し直しています。

●経営理念 『樽の味は従業員の幸せを第一に考え、一人ひとりが輝く、働きがいと活気に満ちた職場づくりを最優先の使命として全力を尽くします』

二つ折り名刺を開けばクレド、裏には理念。胸ポケットのカ―ドは、ふと迷ったときの小さな羅針盤です。

従業員の内側が満ちるほど、にじみ出る幸せはやさしく周囲を照らします。
だから技術だけでなく、人としての成長を支える場づくりにも力を注ぎます。
GCC研修や『日本で大切にしたい会社』伊那食品工業への視察――外気に触れるたび、学びの気泡がふわりと立ち上がり、発酵は少しずつ進んでいきます。


心が弾んだ2つのできごと
2025年楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞できたこと。
お客さま投票でいただいた栄誉は、現場・事務・配送――みんなの“発酵熱”が重なって生まれたご褒美でした。

もう一つは2026年2月モン・サン=ミシェルを見に行けたこと。ケルト人の聖地に立ったとき、『発酵で世界を幸せに』という言葉が、遠い夢ではなく「もう少しで届きそうな目標」に感じられました。


父と向き合った時間が、いま“感謝”に発酵する
夜な夜な悩み、怒り、泣き、もがいた日―――。細田社長は、父の経営方針に正面から反発した頃を思い出し、そっと目を潤ませます。
「お父さんに真正面から物申せるのは幸平さんだけだった」
スタッフの言葉が、当時の苦しさを静かな感謝へ変えてくれました。寄り添い方を覚えた今、父も私も、それぞれの場所から会社を支え合っています。

やさしい発酵は、海を越える
『発酵で世界を幸せに』を胸に、ゆっくり発酵してきた仲間たち。そして、ずっと支えてくれている生産者さんや、地元で応援してくださっている方々と共に次の目的地、まだ見ぬ海外の食卓へ。

パリ・『iRASSHAi』での試食会を起点に、たくあんの乳酸菌が生む気泡のように、物語はぷくりと弾み、小さな波紋となって静かに世界へ届こうとしています。

ご協力いただいたお店

樽の味
https://www.tarunoaji.com/
店舗情報
〒644-0023
和歌山県御坊市名田町野島3597
営業時間: 9:00~17:30
定休日: 土曜・日曜・祝祭日
TEL:050-7102-2756
  • photo:
    Sota Horii

  • text & edit:
    Miwa Hirozawa