
“発酵で世界を幸せにする” ―
和歌山からパリへ、たくあんが海を渡る。
正直に、まっすぐに「おいしい!」をつくり続ける昔ながらの漬物屋。
樽の味 代表取締役社長 / 細田 幸平さん
公開日:2026年5月7日

「お店には毎日、小さなドラマが生まれている」
Peops(ピ―プス)は、そのドラマの語り手を訪ね
情熱と想いの源泉をそっと掘り起こしてきました。
今回ご登場いただくのは、2026年2月、
パリで有名な日本食材店のコンセプトショップ『iRASSHAi』に
『昔ながらのたくあん』を抱えて海を渡った
和歌山県御坊市の漬物屋『樽の味』二代目、細田幸平さんです。
絶賛の裏で細田社長の胸に浮かんだのは、5年前――
夜な夜な悩み、怒り、泣き、もがいた日々。
崖っぷちからパリへ。
たくあん一切れに込めた逆転の物語を、4話にわたってお届けします。
取材にご協力いただいた人

- 細田 幸平 さん
- 樽の味 代表取締役社長
- 2012年に樽の味に入社。前職はWEBデザイナーであり、その知識や技術を活かしネット販売の拡大に大きく貢献。無添加と発酵食品づくりを軸に、日本の伝統食文化を次代へつなぐことを使命として事業を展開。また素材選びから製法まで妥協せず、昔ながらの知恵を現代の暮らしに合う形で届けている。健康と美味しさを両立した商品開発を通じ、食卓に安心と幸せを広げることを目指す。2024年に代表取締役社長に就任。
パリで8割がうなずいた『昔ながらのたくあん』
2月のパリ、ル―ブル美術館から歩いて3分。
2023年オ―プンの『iRASSHAi』は、在仏日本人なら誰もが知る日本食材のコンセプトストアです。
そのショップの試食カウンタ―に並んだのは、和歌山からやって来た『昔ながらのたくあん』。
興味津々でひと切れを口に運んだフランスの人たちが、頬をゆるめ、「C’est bon !」
――8割がそう声をそろえ、親指を立てたといいます。
この試食会を仕掛けたのは、社長就任3年目に入った『樽の味』二代目・細田幸平社長。
きっかけは、地元のアンテナショップ『あんちんレストラン』の協力でした。
『発酵で世界を幸せに』――その旗を掲げ、商工会議所や青年会議所で和歌山の魅力を語り続けてきた細田社長。蒔いた種が少しずつ芽を出し、点と点がつながった――そして、たくあんはついにパリへたどり着きました。


2023年8月、パリに「iRASSHAi(いらっしゃい)」というコンセプトストアがオ―プン。ワンランク上の品揃えで、日本人にとっても納得のラインナップ。
iRASSHAi(イラッシャイ)
https://irasshai.co/
インスタグラム
https://www.instagram.com/irasshai.paris/

いまフランスでは、ナチュラルワインや生ハム、チ―ズ、ザワ―クラウトなど“Fermentation(発酵)”があらためて脚光を浴びています。健康志向や地産地消の追い風もあり、発酵専門店まで登場。
添加物に頼らず、微生物が生む酸味と旨味をゆっくり味わう土壌があるからこそ、米ぬかで育った日本のたくあんは「新しいのに、どこか懐かしい」味として迎えられたのかもしれません。
一方、日本で同じ商品を試食販売すると「おいしい」は5割ほど。年配のお客さまには「懐かしい」と喜ばれる半面、若い世代からは「酸っぱい!」「黄色くないの?」と首をかしげる声も。
国内流通の9割を占める甘口・着色タイプとは正反対の味なので驚きも頷けます。
そんな中でも細田社長は、やわらかな笑顔でこう語ります。
「次はザワ―クラウトの本場ドイツへ、そして発酵食が盛り上がる大好きなイタリアにも挑戦できたらうれしいです」世界へのビジョンはふくらむばかり。

細田社長は、こうも付け加えました。
「でも、本当に目指したい場所は、じつは別にあるんです」
その言葉の先にあるのは、資金繰りに追われ、味も揺らいでいた5年前。
どん底の『樽の味』で、もがきながら見つけた、一筋の光とは――?
細田社長がつぶやく、
心と身体にやさしいお話

- 時代おくれの漬物屋ブログ
- https://ameblo.jp/hosodakouhei122/
- 「何を使って作るか」「どうやって作るか」「なぜそれを作るのか」そこをごまかしたくないんです。無添加を続けるのは、きれいごとではありません。むしろ、手間もかかるし、悩むことも多い。それでも続けるのは、食べものを作る会社として、そこだけは譲れないと思っているからです。これからも樽の味は、派手さよりも誠実さを、ごまかしのない美味しさを、大事にしていきたいと思います。(時代おくれの漬物屋ブログより抜粋)

photo:
Sota Horii
text & edit:
Miwa Hirozawa
