お店をつくる人々 Peops

人と植物をつなげる、”幸せの循環”
~楽しみ尽くす植物のソムリエ~

植物専門店 VOLTAR 代表 / 宮坂 知佳さん

公開日:2026年1月28日


人生の転機は突然おとずれる

某種苗会社に勤めて6年目。産休を経て復帰後、仕入れを任される店長として働いていました。
しかし、会社の大規模なリニューアルに伴い、突然“解雇” を告げられます。
あまりの急な出来事に、ただ呆然としている間に退職までの1ヶ月が過ぎ…

いつか叶えたい夢だった「自分のお店」を出すタイミングは、心の準備もないまま、
強制的に訪れました。

退職からわずか2ヶ月後、開業届を提出。
「植物のための南向きの路面店」とだけ決めて物件を探し続けましたが、なかなか見つかりません。
そんなある日、ハローワークの帰り道で、“理想の店舗” と偶然出会います。
迷わず連絡を入れ、とんとん拍子で契約まで進みました。

けれど、“お店を出す” と言っても何から始めればいいのか全く分からない…。
そんな私に、ペットサロンを経営されているお客様が、開業手順を一から丁寧に教えてくれました。

まずは仕入れのための車を購入して、友人の大工さんに改装費用の見積をお願いして
事業計画書作成。公庫へ提出し、資金調達にも奔走します。
次は、改装をお願いする建築事務所がなかなか見つからず、
店舗改装をする人と建築士のマッチングアプリの存在を知り
ようやく理想の事務所と出会えたのは、オープン予定の4か月前でした。

改装が終わってからは、什器の準備へ。足場板やテーブルの手配をしたものの、
のこぎりすらなく、足場板を切ることもできない私に、わざわざ滋賀から大阪まで
業者さんが駆け付けて手伝ってくれました。

こうして、一つ一つ――たくさんの人たちの力に支えられて、ようやくお店が完成しました。

実はプライベートでも子どもの小学校進学と重なっていて、この頃はただただ無心で
“思い出せないくらいのスピード” でいろんな物事を決断していました。

いま思えば「あの解雇があったから、夢への一歩が早まった」と前向きに捉えられる。
種苗店で勤務した経験は6年とわずかですが、それがあったからこそ、
周りがやっていないチャレンジにも飛び込めたのだと思います。

例えば、小規模のお店は、仲卸で必要分だけを少量仕入れするのが一般的ですが、
それでは品揃えや単価が他店と同じになってしまいます。
そこで私は、買参権を買うというハードルはありましたが、市場からケース単位で仕入れる方法を選びました。ロスを出してしまうリスクもありますが、種苗会社時代の仕入れ経験を活かし、生産者さんや市場の人たちとのつながりを大切にしながら、
支えていただける関係性と独自性を育んでいます。

今では愛知や鹿児島の生産者さんの元へ直接買い付けに伺うことも。
最初の1年目は仕入れのスパンが掴めず、ロスを出してしまうこともありましたが、
2年目にしてようやく少しリズムができてきました。
模索の日々ですが、「仕事が楽しい!」心からそう思いながら、
自分の城で植物に携わる毎日が本当に天職だと感じています。

独立前から定期的に植栽のお仕事を依頼し続けてくださる洋菓子店やペットサロンのオーナーさん。
苦楽を共に歩んでくれる家族、友人、同業者の先輩方、生産者様、VOLTAR に訪れてくださるお客様――
すべての方に心から感謝しています。

“感謝の気持ち” は、「仕事が楽しい!」という幸せとともに、ますます大きく膨らんでいきます。