vol.109ド真ん中をはずして30年

よい商品を作っても売れなければ意味がない。
言いすぎかもしれませんが、一部の例外を除いて当たっていると思います。
商品の発売には経営判断が必要になり、投じる費用に比例して判断が難しくなる場合もあります。
創業当時、「包装紙」「ポリ袋」を中心に少しずつ品番を増やしていたころ、なんとかカテゴリー数を増やしたいと思い、「リボン」を候補に挙げました。
市場で値段やサイズを調べてみると、16mm幅を使っているお店が圧倒的に多かったものの、弊社は後発。
売れている→需要がある→ 作れば売れる、そんな簡単な話ではないうえに、潤沢な予算もありません。
さまざまな角度から考えて、細い10mmと太い19mmを10色ずつ作りました。
売れ筋ド真ん中の16mmをはずすのは勇気がいる怖い選択でしたが、当時はお客さまの数が少なく、3サイズ展開すると自社の商品同士がライバルになる可能性もありました。
悩みに悩んで作った10mmと19mmのリボンは、結果的に潜在的なニーズを拾うことになり、約30年の ロングセラー商品となりました。

当時は何をするにもとことん財布と相談。
おかげで、じっくり考えて知恵を絞るクセがつきました。
だからこそスタッフも安易に考えないように、新商品のサイズや色展開の案が出てきたときは、「こんだけ色いる？」「3色展開したら保管場所も3倍いるんやで」と、苦言を呈してきました。
3サイズ×3色で9品番のところを、4サイズ×2色で8品番にすることもできるし、6サイズ×1色の6品番のみで十分な場合もあるからです。
リボンは30年前の話ですから、いまの時流にあっていないかもしれません。
ただ、さまざまな角度から考えて答えを導き出す手法は、いまでも通用するのではないでしょうか。

2022年、発売当時の経緯を知らないスタッフが、16㎜を作りたいと申し出てくれました。
これに関しては本当に嬉しかった。
お客さまの数が増え、ロットも増えているので、念願のド真ん中商品にゴーサインを出せたのです。

◆こぼれ話◆

いまでも最終的な価格設定と発売の判断は私が行っていますが、2021年の9月以降、企画会議には参加せず、仕入・在庫・売上の管理まで各事業部に任せるようにしました。
すると、「社長が『色数を減らせ』とか『サイズを減らせ』と言ってた意味がわかる」という声が聞こえてきたのです。
わずか1年でみんなの成長を実感し、鬼の目…、いや、暮松の目にも涙。